2017年4月8日土曜日

クロッカスと保線車両

 三和から山を越えて川前に出た。谷底にポツンポツンと集落があり、夏井川に沿って道路とJR磐越東線が走っている。川前駅が改築されたのに伴い、いわき市が駅のそばに公衆トイレを設置した。用を足しに寄った。2月末に訪れたときにはまだ建築中だった。 
 ホームの待機線に作業車両が止まっていた。震災前に平地の小川・片石田地内で見たことがある。仙建工業のマルチプルタイタンパー(通称マルタイ=保線作業車)だ。バラスト(バラス)が敷き詰められた線路のゆがみをミリ単位で測り、修正するのだという。いやあ、すごい車両だ。
 
 ホームに出て作業車両の写真を撮り、駅舎へ戻りかけると、紫色の花が目に入った。クロッカスだ=写真。花は小さいのに、マルタイに負けないくらいの存在感がある。駅を愛するだれかが球根を植えたのだろう。
 
 クロッカスの全体の花言葉は「青春の喜び」「切望」、紫色は「愛の後悔」、黄色は「私を信じて」だそうだ。
 
 青春の「喜び」はあっという間に「絶望」や「失意」に替わる。それを見事に表現しているのが、4月5日に亡くなった大岡信さんの「青春」という短い散文詩。作品は「あてどない夢の過剰が、愛から夢をうばった。」で始まり、「あてどない夢の過剰に、ぼくは愛から夢をなくした。」で終わる。
 
 クロッカスの鮮やかな紫色に染まっているうちに、詩人の死のニュースに接した。真っ先に「青春」が思い浮かんだ。「夢の過剰」が青春なのだと、それゆえに愛から夢をなくすのだと、若いころ、教えられた。

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